【2028年義務化】50人未満のストレスチェック対応ガイド|中小企業の準備・費用・実施方法【公認心理師監修】
■ 監修
植家 萌美 公認心理師
fiore代表/公認心理師(国家資格)/健康経営コンサルタント
中小企業の職場環境改善・メンタルヘルス支援に特化。年間100件超の企業カウンセリング・研修実績。
■ この記事の要点
- 2028年4月1日から、従業員50人未満の事業場にもストレスチェック実施が義務化
- 対象は事業場単位。10人・20人・30人規模の会社・支店・営業所も対象
- 産業医の選任義務はないが、医師・保健師・公認心理師など有資格の実施者が必要
- 社内に専門職がいない場合は外部委託+地域産業保健センターの活用が現実解
2028年4月1日から、従業員50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務付けられます。
これまでストレスチェックを実施していなかった中小企業の経営者や人事労務担当者の方は、「自社も対象になるのか」「産業医がいなくても実施できるのか」「何から準備すればよいのか」と疑問に感じているのではないでしょうか。
ストレスチェックは、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした制度です。初めて導入する企業では、検査の実施だけでなく、個人情報の管理や高ストレス者への対応なども準備する必要があります。
本記事では、50人未満の事業場におけるストレスチェック義務化の内容と、中小企業が取り組むべき準備、実施方法についてわかりやすく解説します。
1. 50人未満のストレスチェック義務化は2028年4月1日から
いつから義務化される?
2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、これまで努力義務だった労働者数50人未満の事業場にも、ストレスチェックの実施が義務付けられることになりました。
施行日は2028年(令和10年)4月1日です。
ストレスチェック制度は2015年12月に始まり、これまでは常時50人以上の労働者を使用する事業場が実施義務の対象でした。今回の法改正によって、従業員数の少ない事業場にも対象が広がります。
📎 厚生労働省:改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度の施行について(最新の施行情報)
従業員10人・20人・30人の会社も対象になる?
はい。従業員数が10人、20人、30人の事業場も義務化の対象です。10人未満の事業場についても、従業員数が少ないことだけを理由に義務化の対象から除外されるわけではありません。
注意したいのは、ストレスチェックの実施義務は原則として会社全体ではなく、事業場単位で判断するという点です。例えば、本社に25人、別の営業所に15人が勤務している場合、それぞれの事業場について実施体制を検討する必要があります。
50人以上の事業場との違いは?
| 項目 | 50人以上 | 50人未満 |
|---|---|---|
| ストレスチェック | 実施義務あり | 2028年4月から義務化 |
| 実施頻度 | 原則年1回 | 原則年1回 |
| 産業医の選任 | 原則義務あり | 原則義務なし |
| 労基署への実施状況報告 | 義務あり | 原則不要 |
| 個人情報の保護 | 必要 | 必要 |
| 高ストレス者への医師面接指導 | 申出に応じて実施 | 申出に応じて実施 |
小規模事業場では産業医の選任義務がない場合でも、ストレスチェックを適切に実施するための体制づくりが必要になります。
2. ストレスチェックの対象となる従業員は?
正社員だけでなくパート・アルバイトも対象になる場合がある
ストレスチェックの実施対象者は、雇用形態だけで決まるものではありません。法令上、原則として次の条件を満たす労働者が対象になります。
- 期間の定めのない労働契約により使用されていること、または契約期間が1年以上であること(更新により1年以上使用される見込みなどを含む)
- 1週間の所定労働時間が、同じ事業場で同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上であること
そのため、パートタイム従業員やアルバイトであっても、条件を満たせば対象になります。また、対象者の範囲とは別に、勤務時間の短い従業員にも受検機会を提供することが望ましい場合があります。
派遣社員の場合はどうなる?
派遣労働者に対するストレスチェックの実施義務は、原則として派遣元事業者が負います。一方、派遣先にも職場環境を整える役割があります。派遣労働者がいる企業では、派遣元と派遣先で役割を確認し、適切に連携することが大切です。
3. 産業医がいない中小企業はどう対応する?
ストレスチェックのために産業医を選任する必要はある?
常時50人未満の労働者を使用する事業場では、原則として産業医の選任義務はありません。そのため、ストレスチェックを実施するためだけに、必ず産業医を選任する必要はありません。
ただし、ストレスチェックには法令で定められた資格を持つ実施者が必要です。実施者になれるのは、医師、保健師、所定の研修を修了した公認心理師などです。また、高ストレス者から医師による面接指導の申出があった場合に対応できる体制も整えておく必要があります。
外部の専門機関に委託する方法
小規模企業では、社内に専門職がいないことや、経営者・総務担当者が複数の業務を兼務していることも少なくありません。その場合は、ストレスチェックの実施を外部機関に委託する方法があります。
外部委託を利用すれば、実施者の確保、検査結果の通知、個人情報の管理などについて専門的な支援を受けられます。特に小規模な職場では、経営者と従業員の距離が近いため、「自分の回答が会社に知られるのではないか」と不安を感じる従業員もいるかもしれません。外部の専門職が関わることで、従業員が安心して受検できる体制を整えやすくなります。
💡 関連記事:EAP(従業員支援プログラム)の費用相場と選び方ガイド|外部委託の費用感・サービス比較を詳しく解説
地域産業保健センターも活用できる
50人未満の事業場では、地域産業保健センターによる支援も選択肢の一つです。地域産業保健センターでは、小規模事業場を対象に、医師による面接指導や健康相談などの産業保健サービスを無料で提供しています。
ただし、利用には対象条件や回数などの制限があり、地域によって対応状況も異なります。すべてのストレスチェック業務を無料で代行してもらえるわけではないため、利用を検討する際は事前に確認しましょう。
4. ストレスチェック実施までの5ステップ
初めてストレスチェックを実施する企業は、次の手順で準備を進めるとよいでしょう。
目的を明確にし、実施時期・対象者・結果の管理方法・高ストレス者への対応を決定。50人未満の事業場でも、従業員の意見を聴きながら実施方法を検討しましょう。
社内に資格を持つ専門職がいない場合は外部委託を検討。委託先選定の際は、個人結果の通知・保管、高ストレス者対応、面接指導の手配、集団分析、相談体制の有無を確認。
個人結果の秘密保護・受検拒否による不利益取り扱い禁止を周知。厚労省推奨の「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」などを活用。
結果は原則として実施者から従業員本人へ直接通知。高ストレス者から申出があった場合、医師による面接指導を実施し、必要に応じて就業上の措置を検討。
仕事の負担・裁量・上司や同僚のサポートなどの傾向を把握。分析結果だけで原因を断定せず、実際の業務状況や従業員の意見も確認しながら改善策を検討。
5. ストレスチェックの費用と外部委託の選び方
費用は何によって変わる?
ストレスチェックにかかる費用は、従業員数、実施方法、委託する業務の範囲によって異なります。検査の実施と結果通知のみを依頼する場合と、医師による面接指導の調整や集団分析まで依頼する場合では、必要な費用が変わります。
また、少人数の企業では、1人当たりの料金だけでなく、最低契約料金や初期費用にも注意が必要です。料金を比較する際は、基本料金に何が含まれているかを確認しましょう。
無料の実施プログラムは利用できる?
厚生労働省では、ストレスチェックを実施するための無料プログラムを提供しています。ただし、プログラムが無料であっても、実施者の確保、結果の管理、面接指導への対応などが不要になるわけではありません。社内の体制や担当者の業務負担も踏まえて、自社実施と外部委託を比較することが大切です。
公的支援制度も確認する
中小企業が活用できる公的支援として、産業保健総合支援センターによる相談や制度導入支援などがあります。また、産業保健活動に関する助成制度が設けられる年度もあります。助成金の募集条件や受付期間は変更されることがあるため、最新情報を確認しましょう。公的支援を活用しながら、必要に応じて民間の専門機関を組み合わせる方法もあります。
6. 50人未満の事業場で特に注意したいこと
個人結果が会社に知られない仕組みをつくる
ストレスチェックの実施で特に重要なのが、従業員のプライバシー保護です。原則として、会社がストレスチェックの個人結果を取得するには、結果通知後の本人の同意が必要です。
また、労働者に対して解雇、昇進、異動などの人事権を直接持つ監督的地位にある人は、当該労働者のストレスチェック実施事務に従事できません。従業員数の少ない企業では、誰が結果を取り扱うのかを明確にしておくことが重要です。
集団分析では個人が特定されないようにする
集団分析を行う際にも、個人情報の保護が必要です。例えば、従業員が数人しかいない部署の結果をそのまま共有すると、個人のストレス状態が推測される可能性があります。
一般に、10人未満の集団については、個人が特定されるおそれのある集計結果を本人の同意なく事業者に提供しないよう注意が必要です。一方、個人が特定されない方法による分析など、一定の条件のもとで実施できる場合もあります。
2026年6月には集団分析の実施方法に関する省令改正も行われています。最新の基準と厚生労働省のマニュアルを確認し、適切な方法を選びましょう。
従業員が安心して相談できる環境も大切
ストレスチェックを実施しても、従業員が不安や悩みを相談できる環境がなければ、問題が表面化しないことがあります。特に小規模な職場では、人間関係が密接であるため、上司や経営者に直接相談しにくいと感じる従業員もいるでしょう。社内での相談体制に加えて、必要に応じて外部の専門職へ相談できる仕組みを整えることも有効です。
💡 関連記事:EAPとは?5分でわかる導入メリットと成功のポイント|外部相談窓口の全体像を解説
7. ストレスチェックを実施して終わりにしないために
ストレスチェックは、従業員自身がストレス状態に気付くとともに、企業が職場環境を見直すきっかけとなる制度です。しかし、年に1回ストレスチェックを実施するだけで、職場の課題がすべて解決するわけではありません。
例えば、集団分析から仕事の負担感が高い傾向が見られたとしても、その背景にはさまざまな要因が考えられます。
- 特定の従業員に業務が集中している
- 上司と部下のコミュニケーションが不足している
- 役割や責任の範囲が曖昧になっている
- 困ったときに相談できる相手がいない
こうした課題は、ストレスチェックの数値だけで判断するのではなく、日頃の職場の状況や従業員の声を踏まえて考えることが大切です。また、ストレスチェックを実施する時期だけでなく、日常的に従業員の不調や職場の変化に気付ける体制を整えることも重要です。
まとめ|2028年の義務化に向けて計画的な準備を
2028年4月1日から、従業員50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務付けられます。初めて導入する中小企業では、次の点を確認しておきましょう。
- 自社の事業場と従業員が対象になるか確認する
- ストレスチェックの実施者と実施方法を決める
- 個人情報の管理方法を整える
- 高ストレス者への医師面接指導の体制を準備する
- 集団分析や職場環境改善への活用方法を考える
ストレスチェックは、制度に対応するためだけでなく、従業員が安心して働ける職場づくりのきっかけにもなります。義務化の直前になって慌てないよう、今から自社に合った実施体制を検討していきましょう。
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